はじめに
こんにちは!
以前の記事で,思考力を鍛える推理ゲーム「ウミガメのスープ」をご紹介しました。
今回は,「ウミガメのスープ」の当サイトオリジナル問題をご紹介したいと思います。
本記事は,このゲームの基本ルールを知っている方向けに書いています。
遊び方をご存知でない方は,まず下記の記事をご覧いただくようお願い致します!
問題
おれの名前は山田太郎。どこにでもいる平凡な大学生だ。
大学卒業を間近に控えて彼女と箱根へ旅行に行ったのはいいものの,旅先でつまらない喧嘩をして破局し,予定より1日早く帰ってきたのである。
モヤモヤした気持ちを抱えたまま自宅にいても仕方ないので,特に用もないが大学のキャンパスに向かうことにした。
その道すがら,見慣れた友人の背中を見つけておれは声をかけた。
「おーい,ツカサ!」
二条院司(にじょういん・つかさ)は大学で同じゼミに所属する友人だ。
不動産からメディア,ITまであらゆる産業のトップ企業を抱える「二条院財閥」の御曹司であり,モデル体型に甘いマスク,学業優秀・スポーツ万能と絵に描いたような完璧人間だ。
それでいて気さくな性格で誰にも好かれており,おれも仲良くしている。
しかし,ツカサも彼女とヨーロッパ周遊旅行に出かけていて,帰国予定は明日のはずだが,ここで何をしているのだろう?
ツカサは驚いた様子でおれを見た。
「タロー!彼女と箱根に旅行じゃなかったのか」
「それが,旅先で派手に喧嘩して別れちまったのよ。そっちこそ,帰国は明日じゃなかったのか?まさかお前も…」
「みなまで言うな!そういうことさ。」
2人で笑い合ったあと,後に予定があると言うツカサとは別れることになった。
「じゃあな,タロー!ところで,僕はいつも通りに見えるかい?」
「ああ,いつも通りの完璧人間だよ!同じ立場のおれが言えたことじゃないが,あまり気に病むなよ!」
こうして彼と別れたその日の夜,おれの耳に驚きのニュースが飛び込んできた。
さて,そのニュースとは一体何だろうか?
解答
ここから先はこの問題の解答,ネタバレになります!!
プレイヤーとしてこのゲームを楽しみたい人は決してこの先を読まず,ゲームマスターをやっても良いという人に代わりに読んでもらってください
帰ってきた男(解答)
この物語の語り手・山田の耳に飛び込んできたニュースとは,「二条院財閥傘下のIT企業が開発した革新的アプリに関する極秘書類が産業スパイによって盗み出された。スパイは出国直前に空港で捕らえられたが,なんと財閥御曹司の二条院司になりすまして犯行に及んでいた。本物の二条院司は行方不明である」というもの。
山田が出会った二条院司はスパイの変装した姿であり,親しい友人である山田の情報も全て頭に入れていた。彼が山田に問うた「僕はいつも通りに見えるかい?」という質問は,自分の変装や立ち居振る舞いが本物そっくりか,会話の流れを巧みに利用して確認するものだったのだ。
スパイが口を割ったことで,黒幕が二条院財閥のライバルである海外大手IT企業であることが判明した。その後,本物の二条院司とその彼女は,大手IT企業と結託したマフィアに監禁されていたところを現地警察の手で救出されたのだった。
解説
いかがだったでしょうか。
今回も,良質な問いの例とその効果を示しておきます。
- 「驚きのニュース」は,山田(語り手)以外の人間が聞いたとしても驚くような内容だったか?
➡︎答えはYes。
「ニュースはメディア等を通じて報道されたか」などといった質問を続ければ,何らかの社会的事件が起こったのではないかと想像ができる - 「ニュース」は二条院司と関係のあるものだったか?
➡︎答えはYes。
この時点で二条院司が被害者or加害者となったというのが「ニュース」の内容だったのではないかと想像できる。さらに踏み込んでその理由が「二条院財閥」と関係があることを突き止めたい
(※「二条院司(本人)」は被害者であるが,スパイが変装した偽物は加害者であるため,質問者のレベルに合わせて「被害者であり加害者でもある」など適宜フォローを入れると良い) - この問題で登場した会話の内容は全て真実か(嘘は含まれていないか)
➡︎答えはNo。
二条院司(偽物)は帰国を早めた理由として「彼女と別れたこと」を匂わせているがそもそも彼の目的は産業スパイとしての活動である。
この問いから,二条院司(偽物)の発言のどれが嘘だったのか,なぜ嘘をつく必要があったのかを考えることができる。
そして,「僕はいつも通りに見えるかい?」という不自然な発言を深掘りすれば真実に近づける
おわりに
今回は新感覚推理ゲーム「ウミガメのスープ」の当サイトオリジナル問題をご紹介しました。
このゲームでは
- 良質な問いを立てる力
- 情報を引き出し整理する力
- 仮説を立てて真実に近づく力
など,推理力・思考力がかなり鍛えられます。(「水平思考」と呼ばれることもあります)
特に①の「良質な問いを立てる力」は,当サイト・リベラルアーツ研究所がこれからの時代に必須の思考スキルとして提唱している「立問力」に通じるものです。
このゲームはどんなメンバーでやってみても,かなり盛り上がります。
特別な道具も知識もいらず,ちょっと人が集まって時間のあるタイミングで楽しめる推理ゲームなので,是非一度遊んでみてください。
他の当サイトオリジナル問題を「クイズ」カテゴリに収録してありますので,そちらも是非ご覧ください!