こんにちは、現役の東大理系大学院生のサメの助です。
現在は修士課程の2年生で、卒業まで残りわずかとなりました。
以前、一般的な視点から理系の修士課程に進学することのメリット・デメリットについて解説しました。
そこで、今回はより個人的なことを書こうと思います。
本当に個人的なことについて書くので、修士課程に進学するかどうか悩んでいる人にとって直接の参考になるかどうかは分かりません。
ただ、一般論ではなく、実際に2年間の修士課程を経験した学生の生の声は、どこか参考になる部分が必ずあるはずです。
東大の理系修士課程に進学して個人的に良かったことと残念だったこと
私が在籍した2019年度から2020年度の修士課程を通して個人的に感じた、良かったこと3つと残念だったこと3つをそれぞれまとめました。
東大の理系修士課程に進学して個人的に良かったこと3つ
東大の理系の修士課程に進学して、個人的に良かったと思っていることは、
良かったこと①今後あまり関わらない人種の考え方や性質を知れた
良かったこと②自分が何が苦手なのかが良く分かった
良かったこと③どのような領域でも役立つ普遍的な能力を得た
の3つです。
それぞれを解説していきます。
良かったこと①今後あまり関わらない人種の考え方や性質を知れた
これは前回の記事でも書いたことなのですが、IT企業に総合職として就職する予定の私にとって、理系の大学院で実験系の研究室に所属しているような人とは、今後の人生でほとんど関わる機会はありません。
どういった背景で研究を志し、どのように研究に向き合っているのか、そして、普段はどのような物の考え方をするのか、ということが良く分かりました。
社会に出てからは簡単に関わることの出来ない人たちだと思うので、幅広い視野を手に入れることに繋がった、という点で、とても良かったと思っています。
良かったこと②自分が何が苦手なのかが良く分かった
今思えば、学部学生までの人生は、決まったことが出来ればいいだけだったので、適当に流して周りに合わせていればなんとかなることが多かったように感じます。
しかし、大学院では自分自身の研究テーマに対して、正解のない中でいかに最良の結果を出すか、ということが求められるため、より主体的に行動する必要がありました。
誰も正解を知らないし、正解は自分で作るしかない。
誰かをパクることも出来ない。
そんな、今まで経験したことのない環境下でいかに結果を出すか、ということを考えたときに、自分が様々なことを苦手としていることがよく分かりました。
周囲の力を借りるのが苦手
私は、自分の力だけでなんとかしようとしてしまって、困っている時や悩んでいる時に周囲の人に助けを求めることがとても苦手です。
研究室の同期に、周囲の力を借りるのがとても上手な人がいるのですが、その人は自分の実力や頑張りという土台があるのはもちろんのこと、その土台にさらに周囲の人の力を上乗せすることで、大きな成果を出すことに成功していました。
一人の人間だけで出来ることは高が知れているため、周りを巻き込む力こそが自分に必要なのだ、と気付かされました。
人の目がある環境で仕事をするのが苦手
周囲の人の力を借りるのが苦手だ、ということと似たような背景があるのですが、作業経過を見られるのがとても苦手で、どうしても、より完璧なアウトプットのみを見せたい、と考えてしまいます。
途中経過ごとに第三者の目で指摘をもらった方が、より早く、より良い結果へと辿りつけるのだ、ということが分かっていても、なかなか出来ないのです。
研究室内で人に見られながら作業をするのがとても苦手で、図書館にこもったり、他の人が活動しないような時間に活動したりと、人目を避けて研究をしていました。
しかし、全編英語、70ページ超の修士論文を4日間で仕上げなければいけない、という切羽詰まった状況に陥った際は、流石に周囲の目を気にしているわけにもいかず、脇目もふらずに研究室内で作業することが出来ました。
周囲の目が気になるのは、集中力が足りていない、ということも原因として挙げられるのでしょう。
良かったこと③どのような領域でも役立つ普遍的な能力を得た
これも前回の記事で書いたことなのですが、情報を効率的に収集・整理し、一定のルールに則って文章にまとめるという能力と、その土台となる思考力がある程度身についたのでは、と思っています。
しかしこれはあくまでも文章上でのことです。
私はとても話すのが苦手なのですが、いざ話す段になると全く整理がつかず、何を言っているのか訳が分からない、頭の悪い人間に成り下がってしまうので、その辺の訓練は今後必要なことですね。
東大の理系修士課程に進学して個人的に残念だったこと3つ
東大の理系の修士課程に進学して、個人的に残念だったなあと思っていることは、
残念だったこと①コロナウイルスの影響で研究に制限がかかった
残念だったこと②教職員とはほとんど研究上のやりとりしかしなかった
残念だったこと③そもそもの進路を間違えていた
の3つです。
それぞれを解説していきます。
残念だったこと①コロナウイルスの影響で研究に制限がかかった
これは本当に2020年に研究室に在籍していたからこその残念ポイントですね。
私の研究は遠いところに出張してサンプルを手に入れる必要があったのですが、その出張は完全に取りやめになってしまい、研究の方向性に対して大きな影響を受けてしまいました。
また、緊急事態宣言の発令や研究所関係者に新型コロナウイルス感染症の感染者が発生したことにより、そもそも研究室が閉鎖になってしまっていた時期が何ヶ月もありました。
私の研究は、実験室で実験をすることで初めてデータを得ることの出来るような内容ですので、これはかなりの痛手でした。
現在も遠方への出張は出来ない状況ではあるものの、実験は通常通り行うことが出来るようになっています。
修士2年生という、2年間の研究活動の中で特に重要な1年間の、多くの期間で研究から手を引かざるを得なかった、というのは研究全体の達成度に対して大きな影響を及ぼしました。
仮に修士1年生のときにこのような状況になったのであれば、就職活動をオンラインでしつつ、途中からは普通に研究活動が出来るようになっていたはずなので、ここまでの影響は受けなかったはずです。
今回の件は非常に特殊なケースだったとは思いますが、今後修士課程に進学する人にとってみても、2年間という短い期間で結果を出す必要がある中で、もし長期間に渡るなんらかの障害が発生したら、大きな被害を被る可能性がある、ということは頭に入れておいても良いかもしれません。
残念だったこと②教職員とはほとんど研究上のやりとりしかしなかった
良かったこと①で、今後あまり関わらない人種の考え方や性質を知れたと書きましたが、多くの場合はそれは学生を指します。
というのも、教授や准教授などがどのように研究に対して向き合っているのか、ということについては、学生ほどの密度の情報を得ることが出来なかったのです。
どうしても普段コミュニケーションをとるのは学生が主となり、教授などの教職員とのコミュニケーションは、ほとんど研究上で必要なことに偏ってしまっていました。
その道の第一人者がどのように研究を始め、何を大切に研究に向き合っているのか、ということについて、もっと良く聞いておけばよかった、と今になって後悔しています。
今年度はオフラインでの研究室飲み会は開催出来なかったので、そのような話を聞く機会もなかなかありませんでした。
ただ、まだ卒業まではもう少しだけ時間がありますので、どこかでタイミングを見つけて話を伺ってみようと思います。
残念だったこと③そもそもの進路を間違えていた
私は、幼少期からなんとなく興味があった、というだけで研究材料を固定し、その材料を研究出来る、という理由で研究室を選びました。
しかし、研究材料に興味があってもその研究手法・内容についてはさしたる興味はなく、世の中の役に立たず、自分の将来にも直接関係ないものでした。
このことはずっと私の中で引っかかっていて、研究に本気になり切れない原因の一つでした。
自分が本当に興味のある領域は実は他に2、3個あるので、場合によっては社会人になってからもう一度大学院に入るかもしれません。
その際は、自分がなんのために研究をしたいのか、どこに興味があるのか、ということをよく考え、そして東大以外の研究室もよく調べようと思います。
まとめ
私が東大の理系の大学院の修士課程に進学して個人的に感じた良かったことは、
良かったこと①今後あまり関わらない人種の考え方や性質を知れた
良かったこと②自分が何が苦手なのかが良く分かった
良かったこと③どのような領域でも役立つ普遍的な能力を得た
の3つで、残念だったことは、
残念だったこと①コロナウイルスの影響で研究に制限がかかった
残念だったこと②教職員とはほとんど研究上のやりとりしかしなかった
残念だったこと③そもそもの進路を間違えていた
の3つです。
大学院の2年間を通して多くの教訓を得ることが出来たので、今後はこの経験を無駄にしないような生き方をしていきたいものです。
この記事が、少しでも大学院の修士課程を視野に入れている人の参考になったら幸いです。