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今回は,リベラルアーツ研究所50記事達成記念の第2弾として,「これからの時代を生きる上で必要となるリベラルアーツとは」をテーマに,当サイトの共同運営者兼ライターのもりおとサメの助が対談します。
※PV数を公開しつつこのサイトについて語り合った対談第1弾はこちら↓
対談者プロフィール
もりお
東京大学文系学部卒の経営コンサルタント
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サメの助
東京大学理系大学院生
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Twitter:@Samenosuke_LAL
従来のリベラルアーツ,自由七科とは?
もりお:ではまず,従来からある概念としての「リベラルアーツ」のイメージから考えて行こうか。サメの助は,「リベラルアーツ」と聞いてどんなイメージが浮かぶ?
サメの助:やっぱり,僕たち2人の出身大学である東大の「教養学部」かな。東大では駒場キャンパスに通う学部1・2年生が全員この「教養学部」に属して,自分の専門領域を中心としつつも同心円状に幅広い学問に触れられるようになっていることが大きな特徴だよね。
もりお:確かに!入学1年目から専門科目の勉強をする他の大学と違って,文系理系といった枠組みに囚われずに様々な学問の世界を覗くことができるのは大きな魅力だね。
サメの助:まあ,と言いつつも必修科目でほとんどのコマが埋まってしまうので言うほど自由度は高くないのではないかという説も…
もりお:まあまあ(笑)大学に物申すのはまた別の機会にしよう。
私の「リベラルアーツ」のイメージは,高校の世界史の授業で習った「自由七科」だな。いわゆる「リベラルアーツ」の起源は古代ギリシャにまで遡るんだけど、リベラルアーツとは「自由の諸技術」という意味だね。
サメの助: 世界史未選択者にはややハードル高いので詳しく!
もりお: リベラルアーツが発達した古代ギリシャやローマは、奴隷に大きく依存した社会だったんだ。生活に必要な運輸、医療などは奴隷に任せていて、それらがラテン語で「アルテス・メカニケー(機械的技術)」と呼ばれた。それに対して、奴隷を使役する立場の自由民たちが身につけたのが「アルテス・リベラレス(自由の諸技術。英訳はリベラル・アーツ)」だったんだ。
ギリシャやローマの自由民と呼ばれる人々は、生活に直結する技術は奴隷に任せて、あるべき社会の姿を議論したり,芸術作品を生み出したりといった日常を送っていた。
サメの助:なるほど。生活を直接支える知識というより,社会の進むべき方向性を考えたり,新しいものを生み出したりする土台となる知識や思考法といったイメージなのかな。リベラルアーツは元々「人を自由にするための学び」という意味があるとは知っていたけど,それにふさわしい由来だね。
2人に共通するリベラルアーツのイメージ:自由度高く様々な分野の学びが得られる東大教養学部
伝統的なリベラルアーツの起源:古代ギリシャやローマで発達した「自由七科」
伝統的なリベラルアーツの概要:生活に直結する技術というよりは,社会の進むべき方向性を考えたり新しいものを産み出したりする土台となる知識や思考法
リベ研が再定義するリベラルアーツとは?
前の章では,伝統的なリベラルアーツについて見てきました。この章では,リベラルアーツ研究所(以下リベ研)が再定義するリベラルアーツについて議論していきます。
もりお: 伝統的なリベラルアーツについて確認したところで,今度は我々リベラルアーツ研究所が再定義する,新しいリベラルアーツについて議論していこう。
サメの助:リベ研というサイトを通じて「新しいリベラルアーツ」を発信する立場としては,サイトの読者に「何を学ぶか(=知識そのもの)」というよりも「何を学びどう行動するかを考えるきっかけ」を提供していきたいです。
東大の教養学部の話も出たけど,学ぶ側があらゆる学問分野から勝手に科目を選び取ることだけがリベラルアーツなのか?という疑問があるんだよね。
例えば,バイキングで好きなものを取っていいと言われて,好きだからといって揚げ物で皿を埋め尽くすのが本当に自由で素晴らしい食事かというともちろん違う。
もりお:逆にあるべき姿としては,バイキング会場にズラリと並んだ料理を前にして,コース料理の前菜はここから選ぶ,副菜をここから選ぶ,みたいな?
サメの助:コース料理を意識してあえて型にはめる必要はないけど、コースに沿ってメニューが設定されていることを理解していて、実際にコースにするかどうかも自分で選べるけど、基礎知識としてコースの作り方は分かる、みたいな。
自分の軸は持っていて最終決定権も自分にあるけど,その軸を形成する材料の一つがリベラルアーツだと僕は思っているよ。もりおはどう思う?
もりお:今サメの助が「自分の軸」というキーワードを出してくれたけど,私も完全同意。私はリベラルアーツを「自律思考をするための土台」だと考えているよ。リベ研では偉人の名言や名画の解説といった,人類が脈々と受け継いできた伝統的なリベラルアーツに加えて,企業分析やライフハックといった,現代社会を生きていく上で武器となる新しいリベラルアーツを扱っている。これらのリベラルアーツはいずれも,世界に広く興味を持ち,その上で自分が何をするべきなのかを自分で考える土台となると思う。
リベ研が考える新しいリベラルアーツの定義:広く世界に目を向けつつ自律思考をするために必要な「自分の軸」を形成する基本材料
リベ研が提供するもの:「何を学ぶか(=知識そのもの)」というよりも「何を学びどう行動するかを考えるきっかけ」
なぜ今「リベラルアーツ」をテーマにサイトを運営するのか?
「自分の軸」という対談者2人に共通するキーワードが出てきました。なぜ今,「リベラルアーツ」というテーマでサイトを運営するのでしょうか。
もりお:では,私たちがなぜ「リベラルアーツ」をテーマとしているかを整理していこう。
私の意見から言わせてもらうと,特定の技術や知識が重宝されがちかつ,情報が氾濫している現代社会への問題意識がある。情報が氾濫しているからこそ,自分が何を重視する人間なのか,自分の軸をしっかりと持った上で世界に目を向け,自律的に思考・行動することがこれまでのどの時代よりも重要になっているんじゃないかな。
脈々と受け継がれてきた人間の普遍的な智恵を学んだ上で社会に目を向けてみると,自分なりに「これってなんでこうなっているんだっけ?」とか「こうした方がもっと良くなるのでは?」といった「問い」が生まれてくるのではないかと思う。そうした「問い」を立てることが後々,「問題のある現状をこんな方向に変えたい」といった「志」を立てることに繋がるんじゃないかな。
問いを立て,志を立てる。いわば,「立問立志」のきっかけをこのサイトを通じて読者さんに提供できたらこんなに嬉しいことはないですね。
サメの助:「立問立志」か,なるほどね!これはリベ研のキーになる理念かもしれないね。確かに,僕たちもこのサイト運営開始当初はとにかく記事を書くことに集中していたけど,最近少しずつ「いかにして世の中に価値提供していくか」ということを少しずつ考えるようになってきている。記事を書く際にも表面的に雑学を紹介するのではなくて,できるだけ自分たちなりに問いを立てて考察するようにしてきたけど,その成果が少しずつ現れているのかもしれない。
リベラルアーツをテーマに記事を書いたり情報を集めたりしていると,過去の時代がどのような時代だったかを振り返れるのは現代を生きる僕たちの特権だということがよく分かる。その時代には人々がどんな考え方や価値観を持っていたのか,その結果どんなことが起きたのか。そうしたサンプルを適宜自分の中に取り入れ,消化することで,現代を生きるための自分の軸が手に入るように思う。
もりお:なるほどね。これまでの人類の積み重ねてきた集合知を意識して自分のものにして,その上で自分なりの軸を持って行動していくと。
サメの助:そうそう。まあ,言うほど簡単でないことも分かっているつもりだけどね。サイトを通じて情報提供をする者として感じているのは,現代は解決すべき課題が希少化し,日本人全員が画一的に目指すゴールのようなものが定まらなくなってきたということ。そんな中,どの領域に興味を持って,どんなことを突き詰めていきたいのか,ということを僕たち一人一人が真剣に考える必要が出てきた。でも,外部から設定されるのではなく自ら目標を立ててそこに突き進むだけのエネルギーも,そもそも目標を立てる方法も,どちらも持ち合わせていない人が多い。そこで,幅広い切り口から読者さんの知的好奇心を刺激して,それらを手に入れるきっかけとなるようなサイトにしたいと思っているよ。
もりお:なるほどね。前回の対談に続いてアツい男だ(笑)
現役の東大理系大学院生としての意見も聞かせてほしいな。
サメの助:そうだね,今度は学びの実践者としての視点から話そう。現在自分は東大の理系大学院で科学の専門的内容に絞って知識のインプット・アウトプットを行っている。さらに来年からは就職してIT分野の専門領域を作り,その分野での活躍を目指すことになる。こうした状況はともすれば視野が狭くなって,自分の専門外のことには無頓着でアンテナの感度が弱い人間になってしまう原因になるのでは?と恐れているよ。
現代では学際的な考え方が発達してきているけど,これは学問でもビジネスでも同じはずだと思ってる。幅広い領域の知見を掛け合わせることで,自分が身を置く領域に対してもきっと正の影響を与えることができるはずなんだよ。これからのキャリア形成も幅広い領域の経験や知識,人脈を組み合わせて創り上げていくのが重要とはよく聞く話で,自分も納得感がある。このサイトを運営することでそうした学びの機会を自ら作り出すこと,そして幅広い領域の知見を積み重ねていけるのは楽しいことだね。
もりお:サイト運営に対してとても前向きな気持ちを持ってくれていることが分かって嬉しいよ。私が誘って参画してもらったという経緯もあって,サメの助が楽しめているかどうかというのは私にとって超重要な指標なんだ。
リベラルアーツを大テーマにサイトを運営する理由:過去の人類が積み重ねてきた集合知であるリベラルアーツを自分の中に取り込み,自分の軸を持って行動する人を増やすため
リベラルアーツを身につけることにより起こる変化:社会を広く見て「問い」を立て「志」を立てる,「立問立志」が可能になる
リベ研の提供価値:幅広い切り口から読者の知的好奇心を刺激することで,自らの中に目標を持って行動する人を増やす
リベ研が今後特に注力する分野は?
いよいよ最後の章です。前回の対談ではPV数といった数値目標の話が出ましたが,50記事達成という節目を迎えてリベ研は今後どのようなコンテンツに注力していくべきなのでしょうか。
もりお:では最後に,リベ研の各ジャンルの記事について,その意義を確認していきたいと思います。特に注力したいジャンルと,その記事がどのような意義を持ちうるかについて教えてください。
サメの助:民俗学,アート,企業分析,考え方,デザイン・イラストかな。
前提として,これらリベ研の記事ジャンルを,「鍛えられる力」を軸に大きく4つに分けたい。僕たちが生きるこの世界を戦場と捉えて,そこで自分たちなりの戦いを展開していくという観点で分類してみよう。
- 武器を発見し,手に入れる力
- 武器を使う力
- 戦場を知る力
- 戦い方を考える力
それぞれの記事ジャンルには,この4つの要素のどれか,または組み合わせが当てはまるように思うんだよね。具体的には,以下のように整理できると思う。
もりお:なるほどね!私は特にアートと企業分析が気になっているよ。アートは多くの人に「何だかよく分からないけどハードルが高そう」と思われている気がするけど,実は作者の意図や情熱が実にバラエティに富んだ形で表現されていて,それを考察するのは非常に面白い。長年受け継がれてきた芸術作品には,人の心を何らか刺激し,動かす力があるのでそのメカニズムの一端を解き明かしたいな。
企業分析についても,サメの助が言ってくれていることに同意だな。消費者として日々便利なサービスを考えなしに受けるのを当たり前となってしまっているけど,何気なく享受していることがどのような仕組みで成り立っているのかを知ることは重要だね。この対談で何度も出てきた考え方だけど,まずは社会という戦場をよく知って,その中での自分なりの戦い方を見つけていく必要があると思う。
サメの助:そうだね!前回の対談を通して自分たちがなぜこのサイト運営という活動をしているかが以前よりかなり明確になったけど,今回それがさらに深まったのを感じるよ。次の100記事時点での対談が今から楽しみだ。まあまずはサイトを見てもらえることが前提だけどね。
もりお:間違いない(笑)
では,次のマイルストンである100記事目指して引き続き頑張りましょう!
リベ研が今後特に注力する分野:民俗学,アート,企業分析,考え方,デザイン・イラスト
今後の運営方針:読者に価値を提供すると同時に,自分たちなりの戦いを展開していくための力を鍛えていく
※対談の中で登場した「問いを立てる力」についての記事はこちら↓