はじめに
こんにちは!
あなたは,「推理」お好きですか?
日本人はミステリーや探偵小説が好きなお国柄と言われます。
『名探偵コナン』などの大ヒット作品の存在がそれを裏付けていますが,その割には,日常的に楽しめる推理ゲームが少ない印象です。
今回ご紹介する「ウミガメのスープ」は,ちょっと人が集まった時に誰でも気軽に楽しめる,新感覚推理ゲームです!
ゲームの基本ルール
推奨人数:5人前後 (ゲームマスター1人 + プレイヤー4人)
所要時間:20〜30分
役割:
- ゲームマスター ➡︎ プレイヤーたちにある物語を語り,そこに潜む謎を解き明かすよう依頼する。
- プレイヤー ➡︎ ゲームマスターに次々と「質問」を投げかけ,物語に潜む謎を解き明かす。
遊び方:
- ゲームマスターが「ウミガメのスープの物語」(後述)を語る
- プレイヤーは物語の真相を解き明かすため,物語についての「質問」をゲームマスターにぶつける
- ゲームマスターはプレイヤーの質問に対して「はい」「いいえ」「関係ありません」の3種類のいずれかの答えを返す
- プレイヤーは徐々に集まる情報を元に物語の謎を解き明かし,全体像が見えたと思った時点で代表者が推理を披露する
- ゲームマスターはその推理が正解だった場合には「正解」と言って細かい点まで含めた物語の全体像を語る。推理に欠陥があった場合には上記②〜④を繰り返す。
- プレイヤーは基本的に「Yes/No」で答えられる質問しかしてはならない
- あまり序盤で「ひらめいた!」とばかりに長々と仮説を披露しないようにする
(他のプレイヤーが興醒めしますし,間違っている箇所があってもゲームマスターがコメントしにくいです)
ウミガメのスープ(問題)
ではいよいよ,ウミガメのスープの問題をご紹介します。
ある静かな月の夜,海辺のレストランを1人の男が訪れた。
男はメニューの中から「ウミガメのスープ」を注文し,やがてスープが運ばれてきた。
男はスープを一口飲むとスタッフを呼び,「これは本当にウミガメのスープですか?」と尋ねた。
スタッフは「はい,こちらは正真正銘ウミガメのスープになります」と答えた。
次の日,男は自宅で自ら命を絶っているところを発見された。
さて,男はなぜ命を絶ったのか?
【ネタバレ注意!】ウミガメのスープ(解答)
ここから先は「ウミガメのスープ」の解答,ネタバレになります!!
プレイヤーとしてこのゲームを楽しみたい人は決してこの先を読まず,ゲームマスターをやっても良いという人に代わりに読んでもらってください!
ウミガメのスープ(解答)
男は,罪悪感から命を絶ったのである。
男はある船の乗組員だった。
航海の途中,嵐に遭遇して船は難破し,彼は数人の仲間と共に無人島に流れ着いた。
無人島の環境は過酷だった。
水は確保できたが食料となりそうな動植物はほとんどなく,望みは沖合を通る他の船が気づいて救助に来てくれることだけ。
何日も同じ状況が続き,とうとう男の仲間の1人が命を落とした。
そして男自身にも飢えによる体力の限界が訪れようとしていた。
朦朧とする意識の中で,仲間が肉のスープを作り,男に渡してくれた。
「ありがとう。しかしこの肉,一体どこで手に入れたんだい?」
「…ウミガメさ。海辺でうまい具合に捕まえたのさ」
こうして男はウミガメのスープでなんとか命を繋ぎ,間もなく現れた救助船によって仲間と共に救助された。
しかし,男はずっと頭に引っかかっていることがあった。
あの時飲んだウミガメのスープ,なんだか奇妙な味がした。
本当にウミガメを使ったスープだったのか?
疑念を確かめるため,男はウミガメのスープを出しているレストランを訪れ,ウミガメのスープを注文した。
一口飲んで男は衝撃を受けた。
「あの時飲んだウミガメのスープとは似ても似つかない味がする…」
だが,このレストランの方がウミガメを使っていないスープをウミガメのスープとして出している可能性もある。
最後の望みをかけて,男はスタッフに尋ねた。
「これは本当にウミガメのスープですか?」
スタッフは「はい,こちらは正真正銘ウミガメのスープになります」と答えた。
疑念は確信に変わる。
あの時自分が口にしたのは死んだ仲間を使った人肉スープだ
餓死寸前の自分を救うため,生き残っていた仲間は人肉スープを作り自分に飲ませたのだ。
仲間を材料にしたスープなど真相を知ったら男がそれを決して口にしないことを知った上での,限界ギリギリの状況での嘘。
仲間なりの優しさだったのだろうと思う。
それでも,死んだ仲間のスープを飲んで生き残ってしまった事実,罪悪感に自分は耐えられない。
こうして男はその晩,自ら命を絶ったのである。
解説
いかがだったでしょうか。
「ウミガメのスープ」ゲームのポイントは,「隠された真実を明らかにするため,いかに良質な問いを生み出せるか」にあります。
筋の良い問いによって一気に真実に近づくこともあれば,筋の悪い問いばかりが出て一向に真実が見えてこない…ということも起こり得ます。
「Yes/No/関係ありません」でしか答えられないのが面白いところで,YouTubeではクイズ好きな人々を集めていかに少ない質問数で真実にたどり着けるかのチャレンジが行われていたりします。
問いの立て方に唯一の正解があるわけではなく,特にクイズマニアというわけではない方でも自由な発想で楽しめるゲームなので,効率的な解き方という意味では詳細な解説はしません。
代わりに,良質な問いの例とその効果を示しておきます。
- 男が命を絶った直接的な理由は,レストランで飲んだウミガメのスープか?
➡︎答えはNo。レストランのスープに毒などが入っていた可能性が消える - 男は「ウミガメのスープ」を注文することを予め決めてレストランに来たか?
➡︎答えはYes。たまたま注文したわけではないことが分かり,「来店前(=過去)」の時間に思考が向く - 男は過去に「ウミガメのスープ」を飲んだことがあるか?
➡︎答えはYes。これによって過去に何かがあったことが確定し,「どんな状況で飲んだのか」を考え始めることができる - 男が命を絶ったのは,過去飲んだスープとの味の違いに関係があるか?
➡︎答えはYes。これにより,「以前飲んだスープは,偽物だったのでは?」という仮説が立つ。先んじてレストランのスープが本物だった(=スタッフが嘘をついていない)ことを確認しておくと確実。
おわりに
今回は新感覚推理ゲーム「ウミガメのスープ」をご紹介しました。
このゲームは,私が大学時代に教えていた塾で生徒たち相手に謎解きを挑んだことで個人的に思い出深いゲームでもあります。
中3クラスだったのですが賢いメンバーばかりだったため,20分強で完全に解き明かされてしまいました。
このゲームでは
- 良質な問いを立てる力
- 情報を引き出す力
- 情報を整理し,仮説を立てて真実に近づく力
など,推理力・思考力がかなり鍛えられます。(「水平思考」と呼ばれることもあります)
特に①の「良質な問いを立てる力」は,リベラルアーツ研究所(当サイト)がこれからの時代に必須の思考スキルとして提唱している「立問力」に通じるものです。
このゲームはどんなメンバーでやってみても,かなり盛り上がります。
特別な道具も知識もいらず,ちょっと人が集まって時間のあるタイミングで楽しめる推理ゲームなので,是非一度遊んでみてください。
他の当サイトオリジナル問題を「クイズ」カテゴリに収録してありますので,そちらも是非ご覧ください!
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