はじめに
こんにちは!
以前の記事で,思考力を鍛える推理ゲーム「ウミガメのスープ」をご紹介しました。
今回は,「ウミガメのスープ」の当サイトオリジナル問題をご紹介したいと思います。
本記事は,このゲームの基本ルールを知っている方向けに書いています。
遊び方をご存知でない方は,まず下記の記事をご覧いただくようお願い致します!
問題
「助けてくれ!」と泣きわめくA氏を,B氏は何のためらいもなく殺害した。
周囲には大勢の人間がいたにも関わらず,A氏の叫びは無視されてしまった。
B氏はお金に困っていたが,殺されたA氏の財布は何も盗まれていない状態で発見された。
さて,この事件の真相は?
解答
ここから先はこの問題の解答,ネタバレになります!!
プレイヤーとしてこのゲームを楽しみたい人は決してこの先を読まず,ゲームマスターをやっても良いという人に代わりに読んでもらってください!
奇妙な殺人事件(解答)
この殺人事件の舞台は,とあるカフェの店内の片隅のテーブルの上。
売れない若手小説家のB氏は,賞金100万円が出るミステリー小説新人賞への応募作を執筆していた。
作中の登場人物であるA氏は,B氏の考えた密室トリックを用いて,同じく作中の人物であるC氏に殺害されてしまう。
小説の中の話であるため,A氏の叫び声がカフェの他の客や店員の耳に入ることはもちろんなかった。
また,C氏は過去の恨みによってA氏を殺害するというストーリーだったため,A氏の財布は小説内で警察に発見された時,全く手付かずの状態で現場に残されていた。
カフェで書き上げたこの小説が新人賞に見事入選したため,B氏は多額の賞金を手にしたのだった。
(参考:使われた密室トリック)
この問題においてはA氏殺害のトリックはべつに何でも良いのですが,プレイヤーの混乱を誘うため,あえて登場人物の設定と密室トリックの内容を追記します。
A氏はロンドンで金融業を営むやり手の高利貸しで,大勢の人に法外な金利でお金を貸し付けては全財産を奪うまで厳しい取り立てを行う悪質な人物だった。
中には精神的に追い詰められて自ら命を断つ人もおり,小説内の殺人実行犯C氏の弟もその一人だった。
復讐に燃えるC氏は,A氏の殺害を計画する。
ある時,C氏はA氏がロンドン郊外のホテルに宿泊するのを知り,まずはホテルの前でスタッフのフリをして「香水の試供品」を渡した。A氏が最新のファッションに関心の高い人物であることを予め調べてあり,このような香水をすぐに試すことを知っていたからだ。
A氏が一旦ホテルに入り,香水を付けて夕食を食べに外出したのを確認したC氏は,ベッドメイキングのスタッフに変装し,予め用意していた合鍵でA氏の部屋に侵入した。
机の上に散らかっていたA氏の私物を引き出しに収納し,同時に1匹のスズメバチも引き出しに忍ばせた。
そして,予め室内の換気口にスズメバチを誘導する果汁を塗り付け部屋を後にした。
何も知らずに帰ってきたA氏が,机の上に置いたはずの私物が見当たらないので引き出しを開けると,スズメバチが飛び出してきた。
少年時代にスズメバチに刺されたトラウマがあるA氏は必死に腕を振り回して追い払おうとするが,逆効果でスズメバチは興奮状態になりA氏に迫る。
さらに,C氏が渡しておいた香水にはスズメバチを引きつける化学物質が含まれており(ある種の香水には実際にこのような効果があるので注意が必要),A氏はスズメバチに刺されてしまった。
次の瞬間,アナフィラキシーショックがA氏を襲い,A氏は助けを求めながら絶命した。
スズメバチはしばらく部屋を飛び回っていたが,換気口に塗り付けられていた果汁に気づき,そこから屋外へと飛び去っていった。
こうして,密室殺人が完成したのである。
解説
いかがだったでしょうか。
今回も,良質な問いの例とその効果を示しておきます。
- A氏が叫んだとき,周囲の人々には無視されてしまったとあるが,周囲の人々には叫び声が聞こえなかったのか?
➡︎答えはYes。
さらに「A氏の姿は周囲から見えていたか?」などと問いを重ねれば,A氏が何かしら特殊な環境に置かれていたことが分かる - A氏の財布が無事だったとあるが,B氏はA氏の財布を盗もうとしていたか?
➡︎答えはNo。
ではどうしてA氏は殺さなければならなかったのか?恨みか?愉快犯か?などと考えることができる - B氏は最終的にお金を手に入れたか?
➡︎答えはYes。
財布以外の金品が盗まれたのか,それとも別の手段か?それはこの事件と関わりがあるのか?などと考えることができる
おわりに
今回は新感覚推理ゲーム「ウミガメのスープ」の当サイトオリジナル問題をご紹介しました。
このゲームでは
- 良質な問いを立てる力
- 情報を引き出し整理する力
- 仮説を立てて真実に近づく力
など,推理力・思考力がかなり鍛えられます。(「水平思考」と呼ばれることもあります)
特に①の「良質な問いを立てる力」は,当サイト・リベラルアーツ研究所がこれからの時代に必須の思考スキルとして提唱している「立問力」に通じるものです。
このゲームはどんなメンバーでやってみても,かなり盛り上がります。
特別な道具も知識もいらず,ちょっと人が集まって時間のあるタイミングで楽しめる推理ゲームなので,是非一度遊んでみてください!
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